立命館国際研究 18(3), 547-564, 2006-03。ネット上で読めました。
ハイデガーらをナチス寄り哲学者として批判してきたアドルノ自身が、1934年に自らも音楽誌にナチス寄りの批評を書き、戦後その件を沈黙していた問題について。
ウィキペディアに書いてあったことはおおむね事実だったようです。
論文の副題にある「ハルプユーデ」とは「二分の一ユダヤ人」という意味。ナチスから「おまえはユダヤ人だ」と迫害され、アーレントら純粋のユダヤ人からは裏切り者呼ばわりされる、アドルノの微妙な出自、立ち位置を示す言葉です。こういう言葉を使うアーレントもどうかとは思いますが。
井上論はアドルノに同情的な筆致なのですが、私はアドルノにはっきりと批判的になりました。自分の過去のナチス賛同を棚に上げて、「詩」だの「文化」だのといった巨大な対象にナチズムの遠因を求めるような哲学が、意味あるものとは思いません。