核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

吉本隆明の矛盾についても書こうと思ったら

 どうも引用する気力が出ません。

 大江健三郎吉本隆明の、それも一九六八年前後の言説には、根本的に私の気を滅入らせる何かがあるようです。

 「お前が生まれる前だからだろ」とのご意見もあるかと思いますが、古代ギリシアや明治時代の言葉の引用だったらこうはならないのです。

 もちろん、古代ギリシアや明治にだって戦争や差別はあったし、間違った意見も多々ありましたが……。

 うまく説明できないので、吉本隆明の矛盾を以前紹介した橋本論文から孫引きします。

 

   ※

 吉本隆明氏は、『吉本隆明 僕なら言うぞ!』(青春出版社・1999年)
208頁以下において、次のとおり述べている。
「前にテレビの大学生が参加していた討論会で、一人が「何で人を殺
しちゃいけないんですか」って聞いたら、そこにいた大人がとっさにこ
れにまともに答えられなかった。その中で一人だけ「人を殺していい状
況が一つだけある。それは戦争だ」と言っているのが精一杯でした。そ
のとき冗談じゃない、戦争だって人殺しはいけないよ、と思いました」

 (引用後略 208頁以下とのこと)

   ※

 

 これだけなら理解できなくもないのですが、同じ著書の数頁前で、矛盾したことを述べているのです。

 

   ※

 「もし万が一、どこかの国が攻めてきて日本国内をめちやくちゃに
荒らして、人も殺すし、悪いこともするし、というようなことが起
こったらどうするんだ、平和主義者のお前はどうするんだって言った
ら、そのときは個人の喧嘩と同じで何でもするさって、僕はそうです
ね。」(202頁)

   ※

 

 そういう状況を普通は自衛戦争というと思うのですが、吉本隆明がその矛盾に悩んでいるようすはまったくありません。支離滅裂です。

 なぜこういう人に正面から反論し、批判する人がいないのでしょうか。

 少なくとも私は、戦争時に「個人の喧嘩と同じで何でもするさ」という態度をとる人を、「平和主義者」とは認めません。