核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

戦時下に湯川秀樹が書いた文章を読んでみた

 例のごとくデジコレで検索すると、太平洋戦争下の、『軍事と技術』とか、『言論報国』とかいう物騒な雑誌にも、湯川秀樹は科学解説記事を載せています。

 湯川の名誉のために急いでつけくわえますが、彼の言動は反戦的では決してないかわりに、小林秀雄らのような神がかった戦争賛美でもありません。もちろん原子力エネルギーの軍事利用の可能性にもふれてはいますが、日本ですぐに原子爆弾が作れるような景気のいいことは書いていません。「精神力と物理力の関係は和ではなく積」という言葉もありました。つまり物理力がゼロなら、精神力が100あっても積はゼロになると。軍部や時局便乗者の、精神主義偏重に対する湯川なりの反論なのでしょう。

 湯川・小林対談での湯川の発言の多くは曖昧模糊としていて、何を言ってるのかさっぱり要領を得なかったのですが、過去の湯川が同じような話題を扱って書いた文章は実に明晰です。京都育ちで「お公家さん」と呼ばれるほど上品だった湯川秀樹のこと、小林秀雄の発言をまっこうから否定して、恥をかかせたくなかったのではないでしょうか。