今度は村井弦斎が、本名の寛(ゆたか)で投稿した論文です。
これも国会図書館から取り寄せた資料です。
多事多難な明治十六年。
内政の改良、外交の修整、憲法の制定、国会の開設、海陸二軍の拡張(あ、十代の村井寛の意見ですから)、殖産興業の奨励、条約の改正、治外法権の廃止と、なすべきことの多い時期です。
そんな時代に、村井寛が最大の急務と名指したのは何か。
「財政の改良」です。
具体的には、「不換紙幣の消却」と「租税の軽減」。
紙幣の価値下落は物価上昇を招き、重税とともに民衆を苦しめています。
それさえ実行すればいいことずくめ……みたいに村井寛は言ってますが、どんなもんでしょうか。前述の通り、明治一六年の政府にはやらねばならないことがたくさんありますからね。増税メガネさんと違って。
後年の村井弦斎は社会についてはさかんに発言しても、政治にはあまり言及していないので、憲法制定や国会開設を語る彼はちょっと新鮮でした。自由民権運動の嵐と、無縁ではいられなかったのでしょう。