題名は副題込みで正確に表記すると
『反資本主義が日本を滅ぼす 官民癒着の毒、社会主義の嘘』
表紙、背表紙、帯ともに、反資本主義という部分が赤字です。
前回紹介したN・フレイザーの著書とは真逆の、資本主義を正面から擁護する本。これはこれで異論もありますが、フレイザー著よりはフェアであり、何回かに分けて論じるに値します。
帯には「無知蒙昧な経済論議、言論人を撃つ!」と称して、批判対象がずらりと(こちらは青字で)。
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MMT 『資本論』礼賛 新型コロナと私権制限
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当ブログが批判してきた対象と重なる名前もあれば(『資本論』など)、初めて聞く名前(MMT(現代貨幣理論)など)もありました。帯には名前がありませんが、私が「マルクスに寄り添いすぎ」という感想を持った、岩井克人『貨幣論』も批判されています。
木村著の骨子は、「資本主義そのものが悪いのではない。今日あちこちで批判されている新自由主義とは、国家・政府と癒着した縁故資本主義である」というものです。木村氏は国家による市場への介入には常に批判的であり、リバタリアンに近い自由主義の立場だと表明なさっています(「あとがき」 三〇六頁より大意)。
私のほうはリバタリアンではなく、国家にも企業にも個人にもなんらかの、外からの規制は必要だと考えているので、最初から最後まで木村著に賛成というわけにはいきませんでした。しかし、新古典派経済学(特にオーストリア学派)に依拠してのマルクス否定という点、さらには現代日本での安直なマルクス復活の流れへの批判という点までは、木村氏と意見を共にします。
MMTについては…………うかつにも、この本で初めて知ったので(あんなに貨幣論の本を読んだというのに)、勉強しなおします。もしかしたら、谷崎潤一郎「小さな王国」を、新たに読み直す契機になるかも知れません。急にスケールの小さい話になってすみませんが、私にはあの作品でマルクス否定論を展開したいという、長年の野心がありまして。