大河ドラマ『光る君へ』放映記念。といっても、以前に書いた記事の再掲ですが。
小説『女道楽』の冒頭の会話。六條の息所の生霊の話になって。
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母「それは嫉妬の幽霊だよ、光る君と云ふ人が男にあるまじき不品行な事をして彼方の女を欺したり此方の女を欺したりするから其女が生きながら幽霊になつたのです」
(略)
小娘「今ではその光る君と云ふ様な人も居ないでせう、女を欺したり悪い事をしたりする様な人は」
村井弦斎『女道楽』(一九〇三) 二ページ
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今でもいます。明治時代にも令和時代にも。ホストが大金をまきあげたとか。
「光る君」と称したのはたぶん弦斎の苦心したところで、「光源氏」といってしまうと、
「源氏ってなに?」
「天子様の御子孫ですよ」
「天子様の御子孫が悪いことをなさるの?」
と、明治最大のタブーにふれてしまうことになるのを危惧したのでしょう。
村井弦斎の、『源氏物語』や平安王朝文化に批判的な論は『酒道楽』にもみられますが、弦斎ドラマ化計画の妨げになっては困るので、このへんにしておきます。