核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

フランス人作家の手になる、「雲隠」巻

 『源氏物語』に感情移入するあまり、光源氏の死を暗示した、本文のない「雲隠」の巻を自分で書いてしまったフランス人作家がいるという話を、Yahooニュースで読みました。

 

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 源氏物語』全巻のなかの謎めいた欠落。紫式部を敬愛してやまないフランスの女流作家マルグリット・ユルスナールは、失われた「雲隠」の巻を「再現」した。それが、『源氏の君の最後の恋』(Le Dernier Amour du Prince Genghi, 1937)である。  晩年、光源氏は、死期の遠くないことを悟り、都を離れ、山里に隠遁する。源氏の何人かの妻のうちのひとりで、いまだに源氏への思慕を忘れ去ることができない花散里は、源氏の元を訪れるが、源氏は花散里を追い返してしまう。しかしあきらめきれない花散里は、源氏がほとんど視力を失っていたのをよいことに、まず道に迷った農夫の娘に化けて、源氏に接近するが、もう少しで源氏に抱かれるというところで光源氏に真意を告白してしまい、拒絶される。2ヶ月後、花散里は、今度は地方の名家の若妻を装い、「中将」という偽名で再度山の庵を訪ねる。完全に失明していた源氏は、それが花散里とは気づかず、彼女に情を移していく。花散里は、そこに居続け、盲目の源氏の世話に専念する。臨終の床で、源氏は、人生で愛した女性たちを追想し、その名を数え上げる。藤壺、紫上、六条御息所、夕顔、空蝉、明石、女三の宮、そして花散里が変装した農夫の娘の名前も、今彼を看取っている「中将」の名も口にする。ところが、「花散里」の名前だけは、想い浮かばない。「もうひとり、あなたが愛した女性をお忘れになっていませんか?」花散里は死にゆく源氏にすがり泣きながらたずねる。源氏はすでに息を引き取っていた……。

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 なかなかではありませんか。紫式部の作風ではないと思うけど。

 実のところ私は、原文はおろか現代語訳でさえ、『源氏物語』を通読していないのでした。谷崎訳でも読んでみるかな。