ど~もここ数年の松元雅和氏は、「正戦論」に傾いていないか、『平和主義とは何か』の頃からスライドしていないかと危惧を抱きつつも、同氏のお仕事には注目しています。私の考えとの違いは常に意識しつつ。
一応再確認しておきますが、私は「正しい戦争などない」という立脚点の、戦争廃絶論者です。正戦論というのは、サッカー選手がゴールポストを動かせるようなもので、 自分らのチームに都合よく規定するにきまっているのです。
たしかドラえもんのセリフにもありました。タイムマシンで戦国時代に行っていくさに巻き込まれ、「正しいほうをたすけなきゃ」というのび太に対して。
「どっちもじぶんが正しいとおもってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」
私は正戦論よりもドラえもんの言葉に賛成します。
さて、そういう戦争廃絶論は今時流行んないかと思ったら、松元論に言及がありました。カントの永久平和論を継ぐ現代の研究者として。
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ブライアン・オレンド(Brian Orend)は,必ずしも楽観的な見込みのもとで
はないが,長期的な戦後法規の一環として幾つかの国際制度改革を提案す
る(Orend[2000] pp.240–255)。スティーヴン・リー(Steven Lee)は,
個別の戦争をどのように終結させるかのみならず,戦争全般をどのように
終結させるかをめぐる「戦争廃絶法規」(jus in abolitione belli)という別
個の戦争の正義を打ち立てるべきだと議論する(Lee[2012] pp.295–306)。
これらは,非理想理論である正戦論が,戦争なき社会という理想状態の輪
郭を描く理想理論の射程を含みうることの一例となっている。
(18頁)
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オレンドやリーも一種の正戦論者ではあるようですが、戦争廃絶という理想を射程に入れている分だけ、ウォルツァーら正戦論の主流派とは違います。
ただ私は、「国際制度」や「戦争廃絶法規」といった上からの抑制で、戦争廃絶が成るかについては、今の私は疑わしいと思っています。それらに違反して戦争をやる国が出た場合、「戦争をするな。でないと戦争で止めるぞ」になりかねないのです。なりかねないどころか、向戌(しょうじゅつ)の弭兵(びへい 戦争廃絶の試み)はそうやって崩壊しました。
戦争廃絶は正戦論の延長でではなく、(松元氏が言及しなかった)絶対平和主義の側からしか実現できないと、今の私は考えております。……さて論文書くか。