村井弦斎という小説家の生きざまを、凝縮したような一言です。以前紹介した、
「想像は時あつて事実の讖(しん)となる」
よりもわかりやすい言葉です。
料理小説『食道楽』の、料理の相談を受けた時のお登和嬢のセリフ。ほかに、
「ありますとも」や
「どんなにか美味しゅうございましょう」
もあるわけですが、発明小説家・アイディアマンとしての面も考えると、これが一番なようです。
その一例。一食二十銭(今の2000円ぐらい?)のメニューを考える場面で。
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「暑い時分ですから冷した珈琲(こーひー)でも出しましょう」小山「オヤ、そんなに出来ますか。二十銭の原料で上りますか」お登和嬢「出来ますとも。念のために一つ一つ紙へ計算を記(しる)して御覧なさい」
『食道楽 秋の巻』「第二百三十一 暑中の飲物」 青空文庫より
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どんなトラブルも料理で解決。「出来ますとも」が合い言葉。やたら使われているので、宮武外骨の『滑稽新聞』でネタ扱いにされてもいます。
弦斎イベントのポスターに使えるかもです。『食道楽』のメニューを細かい横書きの字でびっしり並べた上に、でかでかと縦に「出来ますとも」。