発明小説『日の出島』でも、村井弦斎はアルミニユームの将来性を熱く語っていました。
村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その3 「アルミニユーム」 - 核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ (hatenablog.com)
『食道楽』にもアルミの記述がありました。銅製の鍋は体に悪いとかいう話題から。
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「この節流行(はや)るアルミニューム製の鍋も買てみました。これがその鍋です。綺麗で軽くって変色もせず緑青(ろくしょう)も出ないといいますから大層便利です。大原さんアルミニュームというのは金属だそうですけれども紙より軽い位ですね。不思議ではありませんか」大原「それは非常に軽いそうです。ただその金属の接合法が発明されないので広く行われませんがもしも接合さえ出来れば鉄の代用品になって何事にも用いられましょう。第一軍艦や汽船をそれで製造すると大利益です。仏蘭西(ふらんす)では小さい軍艦を製造してみたそうです。この金属は妙な特質があって外の金属が尽(ことごと)くレントゲンのエッキス光線に不透明であるのにこの金属ばかりは最も透明です。アルミニュームでレンズを拵える事が出来たらエッキス光線の写真が取れると研究中だそうです。今出来ている鍋や皿のような物はプレッス即ち圧搾器(あっさくき)で圧し出したものですね。軽い事はこの上なし、外国ではアルミニュームの名刺が流行するといいます。道理でそのお鍋を大層軽そうにお持ちなさると思いました
村井弦斎『食道楽』(「第八十五 軽い鍋」 引用は青空文庫より)
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実際、レントゲン写真にはアルミニウム板が使用されているそうです。
軍艦や汽船はどうか知りませんが、二十世紀のアルミニウムの用途としては飛行機があげられます。軽い事はこの上なし。『食道楽』は料理のみならず、未来の技術までも見据えた小説です。