核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「高砂の巻」その3 「アルミニユーム」

 「アルミニユームは鉄よりも非常に軽くつて鉄よりも非常に堅い鉱物だし、到る処の土中には採り尽くせぬ程ある物だから、それを鉄に代用する時代が来れば鉄の時代は変じてアルミニユームの世界となる。今日は亜米利加に一ヶ所製造所があつて専売特許で製出して居るがあれを非常に廉(やす)く精製し得るの新発明が出来て一方には我身の蓄電池が出来れば鉄道列車を運転するに機関車の様な重くして不便なものを用いるには及ばん」
 (近代デジタルライブラリー高砂の巻」 77/172)

 鉄より非常に堅いってことはないでしょうけど(少なくとも単体では)、目の付け所はさすがです。蓄電池とアルミニウム。20世紀の先駆けです。
 この発案者の雲野学士という人は、石橋学士の友人で、お金夫人を追い出そうと無用な陰謀をたくらんだりもしてましたが、やっと学者の本領に戻りました。
 ただ、私としては弦斎の先進性を手放しでほめるわけにはいきません。どういう最先端科学も、それが(「鶴亀の巻」で見られたような)ナショナリズムと結びつけば、戦争と差別を生む道具にしかならないのです。私がいまひとつ素直に『日の出島』をおもしろがれない由縁です。