核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その1 戦艦道楽

 実在の新造戦艦「富士」を雲野学士らが見学し、その最新技術ぶりをひたすらレポートする異色の巻です。
 ついに弦斎のやる気スイッチが入ったのか、わがままを通せるほど報知新聞社内での地位が上がったのか。『食道楽』のお登和嬢を思わせる饒舌で語りたおします。

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 第一  頓数の多き事
 第二  速力の大いなる事
 第三  機関の新式精巧なる事
 第四  十二伊(いんち)砲の新式鋭利なる事
 第五  十五珊(さんち)速射砲の障壁ある事
 第六  山内自動砲を載せたる事
 第七  新式水雷艇二隻を載せたる事
 第八  水雷の水中発射管を載せたる事
 第九  衝角の猛烈なる事
 第十  以上攻撃力の大なる事
 第十一 防禦(ぼうぎょ)甲鉄のハーヴエー式なる事
 第十二 防水区画の完全なる事
 第十三 防火準備の整頓なる事
 第十四 操舵機の七つある事
 第十五 通信用其他諸管の保護ある事
 第十六 烟筒の防禦鋼板ある事
 第十七 以上防禦力の大なる事
 第十八 耐波性の大なる事
 第十九 三浦艦長以下の帝国軍人を載せたる事
 第二十 以上諸点を合し戦闘力の絶大なる事
  (近代デジタルライブラリー 「富士の巻」60~61/168)
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 以上の二十項目について、それぞれ一章を割き、軍事機密に触れない範囲で詳述しています。読者からの反応が気になるところです。
 後の、「『食道楽』の人村井弦斎」、晩年の軍備廃絶論者になった村井弦斎とは一見別人の感がありますが、根っこの部分は変わってないように思うのです。精密さへの異常なこだわりという一点で。