核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その2 キッス

 太陽燈反対の一味にそそのかされ、石橋学士の前に現れたお金夫人。西洋人の夫婦は人前で抱き合って接吻をすると教えられ、実行しかけたとこでお富嬢に阻止されます。

   ※
 お富嬢慨然として嘆息し「爾(さ)う言つて見れば今では随分西洋風の真似をする人も沢山ありますよ、好い所を真似るなら宜いが悪い所計り真似るのは困りますネ、殊に西洋人は何ぞと云ふとキツス(踊り字)と言つて無闇に接吻(せつぷん)したがりますがあれは全く犬や猫のする事で、(略)西洋人の所行は動物性に近いからあんな真似計りするのです、其癖肌を現はすのは野蛮だと云つて日本の風俗などを誹(そし)る癖に自分の肌を他人に舐(な)めさせてそれを礼式だと言つて居ます、斯(こ)んな馬鹿気た事はありません、
 (近代デジタルライブラリー 「富士の巻」83/168)
   ※

 「文明流」には徹底的にこだわる弦斎ですが、西洋かぶれではありませんでした。西洋の悪い所は真似してはならないとの主張は、『食道楽』でのフーク(フォーク)と箸の優劣論にも貫かれています。
 私も西洋かぶれでも国粋主義でもない人間ですが、西洋の良くない所は真似すべきではないと考えています。軍備拡張とか帝国主義とか、ましてや核武装とか・・・。