核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』「富士の巻」その4 「新華族」

 「金十匹」の挿話より少し前、お金夫人が奉公先を探す時点の章です。
 口入れ屋によると、近頃(明治30年代)には華族の質も低下したそうで。
 
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 「私どもなんぞでは毎度華族さんへ人を入れるが此頃は華族さんが沢山になつたから仲には随分妙な家があるぜ
 (略。主な得意先は)
 一番多いのが男爵でそれから子爵までは沢山来るがモー伯爵となると中々慶庵(注 紹介業者)なんぞへ掛つては来ない、その代わり子爵や男爵は直なものさ、二三年前までは奥様が台所へ出て御飯拵へまで仕たと云ふ連中が近頃メキ(踊り字)華族さんになつたのだから威張る事計り知つて居て、行儀どころか口の利き様も知りは仕ない、
 (近代デジタルライブラリー 「富士の巻」92/168)
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 縁続きの大隈重信だって伯爵なんですけど、容赦はありません。華族制度そのものへの批判ではありませんが。