ここ数巻ほど出番のなかった馨少年。新聞連載にして一年ぐらいは出てなかったはずです。当時の読者も忘れてたのではないでしょうか。私はここ数日ヘーゲル読んだりして弦斎から離れてましたが、どうにか覚えてました。
「蓬莱の巻」での初登場時は、年上のお富嬢に片思い中の純情勤労文学少年でした。
お富嬢の婿選びが最終段階(名計伯か文吉氏か)に絞られた「老松の巻」でもその思いは変わらず(むしろ悪化)、ついに文学を捨てて、お富嬢に認められる発明家になることを決意します。
そして思い立ったのが、当時は脅威だった結核をはじめとする細菌の撲滅薬。
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「是れ御覧なさい最近の外国雑誌に細菌撲殺法と題して斯う云ふ事が出て居る、有名なる米国の電気学者ニコラテスラ氏は強力の電流を人身に与えて少しも少しもその身体を害する事無く体内に在る諸種の細菌を撲殺し得るの理論を公にしたり(略)」馨少年屹然として立ち「怪しかりませんな、矢つ張りお富嬢の事に感奮したのでせうか」
(近代デジタルライブラリー 110/165)
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…その後馨少年は石橋学士の「太陽の光線中に強度の殺菌力を有するものもある」との助言を受け、太陽燈を殺菌に応用する発明に取り組みます。2014年ならどこにでもある殺菌灯ですが、はたして馨少年は一年の期限に間に合うでしょうか。