核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

伊勢崎賢治『武装解除 紛争屋が見た世界』(講談社現代新書 2004)

 東チモールシエラレオネアフガニスタン。そうした戦時下の国々で、国際NGOの立場から武装解除と復興支援に直接携わってきた方の記録です。
 かつて日本で議論になった(私はいまだに反対派です)、国連平和維持活動(PKO)への日本の参加についても、著者は明確な考えを持っています。
「平和維持活動とは「抑止力」であり、武装勢力を武力で圧倒して、いかなる戦闘も未然に回避することが平和維持活動である」(55ページ)と。
 しかし著者は、紛争地域の安定には軍隊での抑止力が必要という現実を認めつつも、それを賛美しているわけではありません。東チモールが「二十一世紀最初の非武装国家」になりうる可能性があったにも関わらず、大国(オーストラリア、米国、ポルトガル)のおもわくによってそのビジョンが否定(国防軍創設)されてしまったことを、「日本人として何も教訓を提示できなかったのが悔しい」(77ページより)とも述べています。
 改憲派護憲派双方の、紛争地域での実態を知らないが故の「神学論争」を批判し、「現在の日本国憲法の前文と第九条は、一句一文たりとも変えてはならない」(237ページ)と本書は結ばれています。
 私も最近、抑止力の問題で頭がいっぱいでして。現在(2004年当時)は立教大学教授とのこと。機会があればぜひお会いして教えを乞いたい方です。