台湾から帰国し、結婚相談所みたいなことを始めた雲岳女史。未婚青年男女のための無名園遊会(合コンですね)をプロデュースします。
とはいえ作者が村井弦斎なので、「酒は百害ありて一利なし」、文明流の余興として、以下のような企画が立てられます。
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「妾(せふ。雲岳女史の一人称)は石橋学士を雇ふて太陽燈発明の由来を演説せしめんと欲し、電気学者を雇ふて近来の発明たる無線電信の試験をなさしめんと欲し、理学者をしてレントゲンのエツキス光線を人体に実施せしめんと欲し、海軍々人をして朝日敷島両戦闘艦の構造を述べしめんと欲し、陸軍々人をして三十年式軍銃の効用を語たらしめんと欲し、北里博士に細菌学の講義をなさしめんと欲し、福澤翁に女大学の攻撃をなさしめんと欲す」
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…なんで婚活パーティーで戦艦や銃の演説なのか。雲岳女史の論理は以下の通りです。
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「此会は青年男女を聚(あつ)むるものなり、青年男女は是れ次期の国民を造るべき父母にあらずや、(略)健全勇武なる国民を作るにあらざれば此の東洋多事の秋(とき)に際し、我邦をして世界万邦に雄飛せしむるに足らざるなり」
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…雲岳女史もヘーゲルと同じようなことを言っています。要は国家に奉仕するための国民作りです。
1899年の日本をとりまく国際情勢は、2014年の現在と比べてもはるかに東洋多事の秋でした。富士・朝日・敷島・三笠といった、国力に見合わない高価な戦艦を明治政府が必要としたわけです。
しかし、国の身の丈に合わない軍事力は国民それの重い負担となるのみならず、それ自体が自走性を持ち、国家のコントロールを離れてしまう危険を持っています。
たとえ現状と乖離していようと、私が軍事力によらない抑止力を探しているゆえんです。