核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

わが『八犬伝』受容史

 私が『八犬伝』の存在にふれたのは小学生の頃、親に連れられて行ったいなかの山に、「八剣士の墓」なんて立て札があり、興味をそそられたのが始まり、だったと思います。「八犬士の墓」じゃなかったのは、さすがにフィクション由来だとばればれになるのを遠慮したのでしょう。

 で、当時はわが家にあった、子供向き世界名作全集の『八犬伝』を、わくわくしながら読んでみたわけです。期待を裏切らない興奮。珠を持つ犬士が一人出てくるたびに、メモに、

 

 「孝」 犬塚信乃

 

 追記 誤字を修正しました。

 

 とか書き込みながら読みました。八人そろった時は感動しました。最後の、功成り名遂げた八犬士が、隠退して山に去って行く場面もじんわりきました。

 その直後(一九八二年)、毎回大々的に宣伝していた角川映画で、薬師丸ひろ子主演の、『里見八犬伝』が公開されました。これは鎌田敏夫の小説『新・里見八犬伝』をもとにした翻案ですが、もちろん楽しめました。テーマ曲が印象的だった話は前にも書いたかも。

 そして翌一九八三年には、『朝日新聞』に、山田風太郎の『八犬傳』が連載開始。

 このたび映画化される、「虚」と「実」の世界を往還する八犬伝の原作です。伏姫を救いに行った若侍が馬ごと川に流されるとこと、いきなり作者と画家の対話に切り替わったとこだけ覚えています。そのあたりで家で取る新聞が変わり、続きはいまだに知らないままです。

 ちょっと話は飛びますが、『ウルティマ4』というアメリカ産のコンピューターRPGが出たのが一九八五年。「謙譲」とか「慈悲」とかいう八つの徳を体現する勇士が世界中に散らばってて、プレイヤーはタロット占いでそのうちの一人になり、残り七人を探して、八徳を兼ね備えた聖者をめざすという物語です。どうもこれも「八犬伝」の影響があるんじゃないかと私はにらんでいます。『ウルティマ4』は実プレイ経験はなく、雑誌記事とかで観ただけなので憶測ですが。

 さらに話は飛んで一九九〇年。ファミコンRPGドラゴンクエスト4 導かれし者たち』が発売。これも全世界に散らばる、残り七人の仲間を探して悪と戦う物語です。

 「徳」とかお説教じみた要素はありませんが(むしろ七つの悪徳?)、これも近くは『ウルティマ4』、遠くは『八犬伝』の枠組みを利用しているようです。

 さかのぼればアメリカ産RPGの元祖『ウィザードリィ』(一九八一)にも、”Murasama Blade”とかいう、村雨だか村正だかわからん名刀が出てくるそうです。こちらも私はファミコン版でやっただけなので未確認です。”Murasame”なら八犬伝村雨由来と確定するのですが。

 そんなこんなで、各方面に影響を与えている、『八犬伝』なのでした。