外見の通り、「重厚な威厳と風格」を備えた政治家です。「軍隊では危険を好む勇敢な男」(267ページ)だったのですが、政治家に転じてからの民衆への態度は常に慎重でした。私的なパーティーには一切出席せず、一回だけどうしても断れない義理があった時は乾杯の直後に座を立ったそうです。
平和主義者というわけではありませんが、無謀な侵略戦争には常に反対し、守りに徹する戦略をとる主義でした。
エレアのゼノン(ゼノンのパラドックスの人。アキレウスは亀に追いつけないとか)の講義を聞き、アナクサゴラス(太陽は燃える石だと主張した自然哲学者)に学んだ知識人でもありました。日蝕におびえる部下に、外套をかざして「これとあれとどこが違う。日蝕の闇を作り出す物の方がこの外套より大きいというだけのことではないか」と言って鎮めたという話が伝わっています。
こういう合理主義者が、どこまで本気で女神アテナとかを信仰していたのかは疑問ですが、少なくとも次世代のアルキビアデスやクリティアスとちがって、おおっぴらに無神論的な言をはくことはなかったようです。