核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『プルタルコス英雄伝(上)』「ペリクレス」―さらばペリクレス編

 書きたい題材がたまってきたので、ペリクレス伝をひとまず終わらせます。
 紀元前429年。息子二人を含む多くの人命を奪った疫病に、ついにペリクレスは感染します。
 
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 ペリクレスの臨終が迫った時、市民の名士や友人でなお生き残っていた人々が彼のまわりに坐って、ペリクレスの徳性や、彼の力がいかばかりであったかを語り合い、その業績や戦勝碑の数を算え上げていた。(略)ところが彼(ペリクレス)は話の一部始終に注意を向けていたのであって、大きな声ではっきりこう言った。(略)最も立派で最も偉大な業績を語っていないのは何とも驚いた次第だ。「それは市民の誰一人として私のせいで黒い喪服をつけずに済んだことである」と。(314ページ)
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 ・・・国王や独裁者ではなく、民主制下の一市民として生涯をまっとうしたこと。やろうと思えばチャンスはあったのに、死後に国民すべてが追悼ムードに入らせれるような「将軍さま」にならなかったこと。それが彼の「最も偉大な業績」だったのです。現代(20世紀~21世紀)の数多い事例を思い浮かべれば、ペリクレスの非凡さが理解できるような気がします。
 
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 (ペリクレスは)あれ程の実力を有しながら、嫉妬や激情に身を委ねず、またどんな敵でも和解のできない相手としてそれに臨まないでいる事を自己の美点の中で最高のものと見なしていた。(314ページ)
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 政策については批判すべき点も多々ありますが(いずれ)、民主制における政治家としては理想的な人柄だったのではないでしょうか。ただ、こういう政治家というのは、民衆からあまり愛されないものなのです。