核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

村井弦斎『日の出島』における森鴎外評

 村井弦斎の最長の小説『日の出島』に、当時の有名文学者を批評した「文学魔界」という章があります。
 ひとまず森鷗外(もりおうがい。文字化けの際はご容赦ください)の項から紹介します(『報知新聞』1897(明治30)年1月12日 (一)面より。旧字は新字に)
 
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 「ところであの鷗外氏だテ、氏は医師として衛生学の泰斗であり、文士として独逸文学の鼓吹者であるが、氏は折々その学識を振廻はされる。小胆なる文学者連に向つて大層八釜しい長談義をされてその跡で御自作の短編小説なぞを見せ付けられて是は何(ど)うじやと仰せられるからは文学者は義理としても褒め奉らざるを得ないネ、譬へば殿様の御前で鶴のお吸物を頂戴する如し、鶴の肉は何(ど)う云ふ者だか、或は彦左衛門流の菜葉汁だか何だか面くらつて居て味なぞは碌に分らんけれども是非とも難有く頂戴仕ると御礼を申さなければならん様になつて居る、然し何処までも鶴の吸物には相違無い、鍋の中に一片や二片は鶴の肉が入れてあるから何処とも無く上品な様な珍らしい様な匂はあるネ、」
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 ・・・要は権威主義だと言いたいのでしょう。とりあえず食べ物にたとえて説明するのが弦斎批評。
 これ以外にも、近代文芸批評史の資料として引用したい文章は多々ありますが、丸ごとスキャンしたほうが早いかもです。旧字体の長い文章を打ち込んでる時に限ってフリーズする法則。