核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

#世界史

トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシーについて』(原著一八三五)

松本重治責任編集『世界の名著 33 フランクリン ジェファソン ハミルトン ジェイ マディソン トクヴィル』(中央公論社 一九七〇)より。 デモクラシー論の古典ということで読んでみたのですが、私には難解でした。論文の締め切りが迫っていることもあり、…

しかし『経国美談』のデモクラシーも

確かに「人民に政権」と書いてデモクラシーとふりがなした箇所はありますが。 実際に政治を動かしてるのは、主人公三人を中心とする「名士」たちであって、名も知れない民衆の動向がつかみづらい、という批判は考えられます。 たまに民衆が出て来たと思った…

たとえばJ・ランシエールなんかに依拠しちゃったりすると

ランシエールの『民主主義への憎悪』あたりを参考文献にしたとしたら。 『経国美談』の主人公三人組がやってることはせいぜい、上からのポリス的統治であり。 乱民・暴民(と作中では名ざされる)計算外の者たち、分け前なき者たちの平等を叫ぶヘージアスの…

キャスティングボート

『経国美談』後篇。阿善の国で、「純正党」(民主派)と「乱党」(平等派)が争った時の挿話。 阿善にはかねてから「専制党」と「曖昧党」がいて、「純正党」と政権を争っていたわけですが、「乱党」は「純正党」が共通の敵なのをいいことに、イデオロギー的…

経国美談コミカライズ。

私は読書ノート代わりに、読んだ本を簡単なまんがにする習慣がありまして。 『経国美談』を8コマ(ノート見開き)にしたところ、周囲からはわりと好評でした。 村上春樹の『騎士団長殺し』の時は「?」な感想しか返ってこなかったのに。 作品の優劣というわ…

政権交代。

博士論文の序論で『経国美談』を扱った時は、後篇後半の平和主義をめぐる部分が中心でした。 今回、『経国美談』全篇を視野に入れた論文を書くにあたっての切り口は、 政 権 交 代 で行こうと思います。読み返して気づいたのですが、善玉悪玉問わず、ことあ…

ヘージアス・沼倉・民主主義の問題点

『経国美談』と「小さな王国」をいったりきたりしていると、つい変な感想を抱くものでして。 前者の登場人物ヘージアスと、後者の沼倉は、ともに「民主的に選ばれた専制者」でして。多数派が専制者を民主的手続きのもとに選んでしまった場合、民主主義を守ろ…

輦は輩でした。

春陽堂版『経国美談』後篇に「安太隆輦」という謎の文字があった問題ですが、国会図書館蔵の初版本を見たところ、 「安太留輩」 だと判明しました。厳密にいうとこの安太留も「安太隆」(作中人物アンタルキダス)の誤りなのですが、これ以上の詮索はなしと…

ブルボン王朝の沼倉?ジョン・ロー

ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・ロー)より。 ※ ジョン・ロー(仏: John Law de Lauriston, 1671年4月21日 - 1729年5月21日)は、スコットランド出身の経済思想家、実業家、財政家である。真手形主義[1] や稀少価値論 [2]を提唱した…

『経国美談』後篇の創作人物、ヘージアス

「第二回 阿善国都に暴民紀綱を紊る 公会堂上に阿慈頓節に死す」より。 阿善(アゼン)とはアテネのことです。 ※ 茲に阿善の南部瑣良美の島に生じたる一人物あり其名を平邪(ヘージアス)と云ふ (略。強い意志と民衆を圧倒する能力を持ってはいたが) 惜い…

アンタルキダスのモデルは宋の向戌?

『経国美談』という小説は、各回ごとに栗本鋤雲、依田学海、藤田鳴鶴らによる漢文の評がついていまして。評といっても批評というよりはあらすじと感想ですが。 で、後篇の第十三回、「(略)兵戈に苦て諸国大平和の議を容る」の学海の評にこうあります。 ※ …