『経国美談』という小説は、各回ごとに栗本鋤雲、依田学海、藤田鳴鶴らによる漢文の評がついていまして。評といっても批評というよりはあらすじと感想ですが。
で、後篇の第十三回、「(略)兵戈に苦て諸国大平和の議を容る」の学海の評にこうあります。
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安太隆輦。春秋時宋、向戌也。
(春陽堂版『明治大正文学全集第一巻 東海散士 矢野龍渓』四五七ページ)
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「輦」という字の意味はわからなかったのですが(「夫夫車」で検索しても、「こし」とか「てぐるま」しか出てきませんでした)、安太隆(アンタルキダス。作中の国際平和会議の提唱者)は春秋時代の宋の向戌(しょうじゅつ。実在の国際平和会議の提唱者)だと言っているようです。
実は私もそのへんがモデルじゃないかな~とにらんでまして。同志を得た思いです。
にしても「輦」。「輩」の誤植なら意味が通りそうですが、安直な推測はやめておきましょう。また国会図書館で初版本を確認してみます。
(2018・8・24追記 「輩」の誤植でした)