核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『経国美談』後篇の創作人物、ヘージアス

 「第二回 阿善国都に暴民紀綱を紊る 公会堂上に阿慈頓節に死す」より。
 阿善(アゼン)とはアテネのことです。

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 茲に阿善の南部瑣良美の島に生じたる一人物あり其名を平邪(ヘージアス)と云ふ
 (略。強い意志と民衆を圧倒する能力を持ってはいたが)
 惜いかな此人は人民の患害を除くの心より寧ろ一身の功名を謀るの志熾にして又政治上の仕組を発明するには特に鋭敏の才あれども其の目的とする所は現在社会に存するの患害を除くにあらずして唯自家の胸中に美麗なる社会の雛形を想造し其の一時に行はれ難きにも拘らず此の美麗なる雛形の如く現在の社会を改造更革せんと欲するに在り
 (春陽堂版『明治大正文学全集第一巻 東海散士 矢野龍渓』三八三ページ)
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 ポパーのいうユートピア社会工学のタイプでしょうか。
 回末の鳴鶴の評には、「平邪是段頓之流亜」とあります。
 フランス革命の指導者の一人ダントンについては名前しか知らないので、一応調べてはおきます。