今日ぐらいは粋な話を。所雄章『人類の知的遺産 32
デカルト』(
講談社 1981)に、「社交の人、そして武断の人、
デカルト」と題して紹介されている、若き
デカルトのパリ生活時代です。
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その彼女(引用者注 後のデュ・ロゼ夫人)をめぐって、この『剣の技法』の著者(引用者注
デカルト。『剣の技法』は著作集未収録)は恋敵からオルレアン(Orleans)街道で決闘を挑まれたこともあり、そのとき、彼は敵の剣を奪って投げ返し、「汝の生命(いのち)あるは、今汝が生命を賭けようとしたこの婦人のお陰だと思え」、と言った
(134ページ)
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・・・『三銃士』の一場面のような話です。もう一つ、
デカルトの金品を奪おうとした悪徳船頭を一喝して畏服させたという『
水滸伝』みたいな話も伝わっており、
デカルトは「人一人の決然とした態度が卑しい心に及ぼしうる」働きを悟った、そうです(135ページ)。
私は非暴力主義者ですが、こういう人を殺めず傷つけずして改心させる武人にはあこがれます(
るろ剣とか)。
デカルト著『剣の技法』も読んでみたいものです。
正直なところ、『
省察』の議論は心服しがたい点ばかりなのですが、反論者たちにていねいに答弁する
デカルトのフェアな態度には、『情念論』でいう「高邁」の徳、「確固として一貫した決意」を感じずにはいられません。
ホッブズ相手にはさすがに切れたみたいですけど。