核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

久保勇「明治期の『平家物語』研究 : 福地桜痴から館山漸之進、山田孝雄へ 」

 2012年には福地桜痴関連の論文が三本発表されていますが(Cinii調べ)、そのうち最新の論文がこちらです。
 
 久保勇「明治期の『平家物語』研究 : 福地桜痴から館山漸之進、山田孝雄へ 」
  『千葉大学人文社会科学研究 no.25 page.1-12 (20120930)』
 
 『日出国(やまと)新聞』1902(明治35)年1月29日掲載の桜痴の社説「叙事の主眼」にある、「余は平家物語を愛読するの余り長門本、嵯峨本を初とし凡そ二十余種に及び」との一節に着目し、桜痴の平家物語研究の先駆性を実証したご論文です。
 桜痴はこの時期の同紙に桜痴が平家物語に取材した短編、「扇の的」「木曽最期」も連載しており、なみなみならぬ平家物語マニアぶりを見せています。
 またマイクロリールをぐるぐるしに行くだけの価値はありそうです。立憲帝政党藩閥のコネを駆使して地道に異本を集めた桜痴の苦労に比べれば、文学研究者にとっては恵まれた時代になったものです。
 個人的には、桜痴のその後の反戦小説との関わりが気になるところです。
 「諸国七道の人民百姓等、或は平家の為に悩まされ、或は源氏の為に亡ぼさる」の一節(「大嘗会沙汰」)を、彼はどう読んだのでしょうか。