核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

『新潮』2013年4月号 没後30年特集 2013年の小林秀雄

 以下三本の論が収録されています。
 
 山城むつみ 「蘇州の空白から 小林秀雄の「戦後」」
 大澤信亮 「小林秀雄序論―日本の批評」
 佐々木敦「批評の初心 2013年に「様々なる意匠」を読み直す/書き直す」
 
 特に興味深かったのは山城論でした。
 「どうせ読むなら全部初出で読んだ方がいい、そう思って」国会図書館大宅壮一文庫小林秀雄の従軍記事「蘇州」(『文藝春秋』1938年6月号)を見たら、すべて311~314ページが検閲で切り取られているとのこと。
 この問題については、陸艶(ルー・エン)氏の「小林秀雄「蘇州」をめぐって(『佛教大学大学院紀要 文学研究科篇』2012年3月)という先行研究がすでにありますが(Cinii収録 http://ci.nii.ac.jp/naid/110008920935。当ブログでも以前に紹介しました)、山城氏はさらに内務省警保局図書課『出版警察報』101号や、都立中央図書館日本近代文学館の当該号を参照し、かなりの部分の復元に成功しています。
 読みごたえのある論考でした。陸・山城両氏の後追いになってしまいますが、この復元作業は参加する価値がありそうです。