『武装解除 紛争屋が見た世界』(講談社現代新書 2004)の著者、 伊勢崎賢治氏(現在、東京外国語大学教授だそうです)の最新のインタビューです。神奈川新聞サイト「カナロコ」様より転載させていただきます。
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■テロの背景にメスを
「日本を守ってくれていた米国は元気がなくなっている。それを認識すべきです。2001年から続くアフガン戦争は米国建国以来最長の戦争です。経済は疲弊し、米国は今年中にアフガンから撤退する意向です。平和を引き続き享受したいと思うなら、日米両国の利益になる9条を大切にしていかなければならない」
-9条は米国の利益にもなるのですか。
「アフガン戦争は終わっていません。逆に(国際テロ組織の)アルカイダ的なものは拡大している。テロの背景には社会の腐敗や貧困がある。構造的な暴力の被害者たちが宗派や言語などで集団化し、衝突して内戦に発展してしまう。ロシアとチェチェン共和国の関係や中国の新疆ウイグル自治区もそう。世界が共通して抱えている病気です。この病気との戦争が9・11以降始まった。その戦いの中で日本が果たせる役割がある」
-役割とは。
「テロの根絶には構造的な社会問題にメスを入れ、テロを嫌う社会、過激な思想を生まない社会をつくっていかなければならない。当事国の内政に入り込み、変えていくしかない。それは優しく、平和的にしかなし得ない。危険でも武装勢力の中に入って調停したり、停戦を監視したりすることも求められている」
-それができるのは日本だ、と。
「9条がつくりだした日本の体臭というものがある。9条の下で暮らしてきて好戦性というものがない。戦火に生きる人々はそれを敏感に感じ取るのです」
■積極的平和主義とは
-集団的自衛権は同盟国が攻撃された場合、加勢する権利のことですが。
「あくまで非武装で、平和的に、です。それは米国が一番望むことでもある。米軍は自衛隊に武力を使って手助けしてほしいなんて思っていない。NATO加盟国の軍隊は皆銃を撃てるわけだから。武器は使えないけど現地の人の心をつかみ、社会の何がテロリストを生んだのかを考える部隊が一つくらいあったっていい。安倍首相の言う『普通の国』になる必要は全くありません」
-武力は平和介入の選択肢の一つにすぎない。でも安倍首相の掲げる積極的平和主義からは、そうした考えはうかがえません。
「非武装で戦いの中に入っていく。これこそが積極的平和主義です。いままでは武力を使わない代わりに、本当に危険なところに入ってはいかなかった。本当にやるとすれば犠牲者が出ると思う。その覚悟があるかどうか、です」
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