星一『三十年後』(1918)からさらに九十年後。あのテーマを極限まで追求した作品、という印象を受けました。
政府ならぬ「生府」によって、平和と健康を理想とし、酒もタバコも禁止するユートピア。そんな健全すぎる監視社会に堪えられず、集団自殺をはかるグループが現れます。生き残ってしまったヒロインは十年後、かつての同志と思いがけない形で再会を…。
「意識ある人間は、はたして恒久的な平和と健康に耐えられるか?」という問題を追求しています。結末には賛成できませんが、久しぶりに考えさせられた小説です。もし私が『平成の平和主義小説』なんて本を出す時が来たら、論じてみたいものです。
これと表裏をなす『虐殺器官』も読みましたので、またいずれ。