芥川の「将軍」には、「ある亜米利加人が、この有名な将軍の眼には、Monomania じみた所があると、無遠慮な批評を下した事がある」との一節があります。
で、アメリカ人ウォシュバンが書いた伝記『乃木』の日本語訳を読んでみました。
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部下は言下に将軍の命を実行した。部下に一瞬の猶予でもあると、燻焔の閃きのように鋭い眼が光る。部下は全身の血を波立たせて、即座に突っ立ち上るのであった。今しも眦を裂いて死を宣したと思うと、忽ち平静に帰って、泰平の逸民たるの外、世に何の思うこともないというような眼を持った人は、他に見たことも聞いたこともない。
(筑摩書房『明治文学全集 49 ベルツ モース モラエス ケーベル ウォシュバン集』 一九六八 三二一ページ)
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Monomaniaという言葉は使われていませんでした。英語の原文も確認する必要がありそうです。