明治二一年の段階で明治三六年を、つまり架空の未来社会を描いた小説。
清水潔(しみずきよし)と夢野実(ゆめのまこと)、女優の乙女の三人が、官界、政界、財界、文学、演劇などの諸事業に手を出しては失敗を重ねる話です。
面白くなりそうな設定ではあるのですが、個々のエピソードの掘り下げが浅い上に結びつきが弱く、一編の小説として成り立っていない印象を受けました。
近代デジタルコレクションを見たところ、初版本とは別に、一八九八年に出た自作自注版がありまして、「明治三六年にもなってこんな事があるものか」とか、福地がはずれた未来予想につっこみを入れてました。今度読み返すときはこちらの版でいこうと思います。