岡安儀之氏の『「公論」の創生 「国民」の誕生ー福地源一郎と明治ジャーナリズム』も今年出た本です。こちらは福地の政論に重点をおいているようです。
「国民」の誕生などというと、国民国家批判論の方々からは評判がよくないかも知れませんが、私は興味をひかれます。特に後年の、小説『女浪人』の一節を知っている身としては。
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「朝廷であらうが幕府であらうが(略)万事上の思召次第で御政治は御独裁、(略)英国その外の国々の如く会議を起して衆説に由て政治を行はせらるゝ様に成りませねば到底日本人が目を覚しまする程の改革は行へませぬ」
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……朝廷や幕府の独裁ではない、自覚を持った国民が下から立ち上げる「公」を、福地は理想としていたように思われます。意志の弱い福地のことだから、この意見も思いつきにすぎないかも知れませんが。