「『浮雲』から持ちこしてきた小説の主題は、一九七〇年代には書き終えられてしまったといえよう」(「はじめに」ⅲ頁)と断言する書。
論拠が示されているわけではなく、自分は「日本で小説を一番多く読んでいる一人だと思う」との、読書量への自負がすべてです。
以後、「戦争の終焉」「原爆の終焉」といった章ごとに「終焉」が語られます。
戦争や原爆がなくなるという意味ではなく、戦争や原爆に抵抗できる小説は書きつくされたとの主旨です。が、どの章も有名作品のあらすじを書き並べた後、やや唐突に「〇〇文学は終った」で閉じているので、著者の論理が見えてきません。
論ではないものに反論してもむなしいだけなので、今回書く論文では川西著への批判はしないことにしました。
私はもちろん、戦争や核兵器や通常兵器そのものがなくなるまで、それらに抵抗する文学は書かれるべきだと思っています。従来通りの小説であるかどうかは別として。