核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

非戦論者ではなかった伊藤野枝

 前から気になっていた、伊藤野枝「傲慢狭量にして不徹底なる日本婦人の公共事業に就て」、ようやく入手できました。

 

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 例へば戦争がはじまる、慰問袋を造って兵士達に送るとか金を出すとか飢饉に際して金をとか品物を送るとか云ふことは普通の人にも気のつくことであつて敢てそれ等の団体がことごとしく大騒ぎをしなければならない程のことではない。これ等は一つの臨時の仕事としての価値しかない。戦争がはじまった時に繃帯を巻いたり慰問袋をこしらへる為めにのみ、ふだんからさういふ団体の用意をしておくと云ふのは手まはしがよすぎて無駄なことだとしか私には思はれない。

 伊藤野枝「傲慢狭量にして不徹底なる日本婦人の公共事業に就て」『定本伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡一 ―『青鞜』の時代』学芸書林 二〇〇〇 二八八頁

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 当時の婦人団体のあり方への批判なのですが、戦争という大状況そのものへの批判はみられません。伊藤野枝はもしかしたら「普通の人」ではないかもと思っていただけに、残念です。