『写真術』は国会図書館のデジタルコレクションで読めるのですが、あちらは白黒画像、こちらは表紙にばっちり色がついています。
それがどうしたと言われそうなので、順を追って説明します。
『写真術』とは、白黒写真しかない時代にカラー写真を発明しようというまじめな写真家と、写真館の娘(の白黒写真)に眼がくらんだふまじめな写真家の物語です。
両者はそれぞれ別の写真館の娘と結ばれ、まじめな夫婦はみごとカラー写真を完成させ、ふまじめな夫婦は親に見放されるものの、それなりの白黒写真家として生きていく、という結末です。
その結末には、二組の夫婦の写真(という設定の白黒の挿絵)が描かれているのですが。この挿絵がもしかしたら、単行本ではカラーな挿絵になってるんじゃないかと期待しまして。
作品の設定通りなら、セルフタイマーや自撮り装置のない時代、二組の写真家夫婦がお互いを撮影し合ったと考えるのが自然でしょう。そうすると、まじめ組を写した写真は白黒で、ふまじめ組を写した写真はカラーになるのではないかと。「床屋のパラドックス」みたいな話ですが、凝り性の弦斎ならやりかねません。
で、まさにその最後のページを上記サイトで読めたわけですが、残念ながら両方とも『都新聞』連載時と同じく、白黒の挿絵でした。