核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

尾崎紅葉「鬼桃太郎」(一八九一)

 「美少年」(一八九三)の主人公は大山桃太郎で、手飼いのイヌを連れ、北海道十勝の沙流(さる)という地に現れます。

 どう考えても昔話の桃太郎が下敷きなのですが、一八九三(明治二六)年当時に桃太郎はそこまで知られていたのか。調べたら二年前にパロディが出来てました。青空文庫で挿絵つきで読めます。尾崎紅葉作、「鬼桃太郎」(一八九一(明治二四)年)。

 桃太郎に略奪された鬼ヶ島で、鬼じいさんと鬼ばあさんは、ひそかに復讐の時を待っていました。そこに苦桃がどんぶらこと。中からは巨大な鬼の子が現れます。苦桃太郎と名付けられたその鬼は、きびだんごの代わりに人間のどくろを腰につけ、竜、ヒヒ、オオカミの三匹を家来にして、鬼ヶ島を飛び立ちます。

 しかし調子に乗った竜は桃太郎のいる日本を飛び越してしまいます。うろうろしていると魔力が切れ、ヒヒとオオカミは海中へ落ちてしまいます。残った竜と苦桃太郎も仲間割れを起こし、けんかしているうちに海中へぼかん!

 本物の桃太郎と戦いもせずに一同自滅するのでした。

 こういうアホな作品が書かれ読まれていたということは、もとの桃太郎はすでに一般に知られていたのでしょう。巌谷小波のお伽噺はもう少し後ですが。