核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

武田仰天子『蝦夷錦』(一八九三(明治二六)年刊行 読む予定)

 弦斎&麗水合作「美少年」の直前(一ヶ月前!)に出た、アイヌ男性を主人公とした小説。

 これを今まで読まずにいたのは不覚でした。あらすじは先行文献で読めるのですが。

 

 アイヌ男性の主人公が、日本(松前藩)に抵抗した末に捕らえられ、命を助けられて「改心」し、日本名と江戸幕府の役職を与えられます。そして故郷に戻った彼は、かつての想い人であったアイヌ女性と結婚し、アイヌの「総酋長」となるのでした。

 

 これぞ故郷に飾る蝦夷錦、とでもいうつもりでしょうか。むしろ「お先棒」という言葉が頭をよぎるのですが。滅び行くアイヌの悲歌、といった傾向の物語でない点は、先行する幸田露伴『雪紛々』と違うところです。