弦斎&麗水合作「美少年」の直前(一ヶ月前!)に出た、アイヌ男性を主人公とした小説。
これを今まで読まずにいたのは不覚でした。あらすじは先行文献で読めるのですが。
アイヌ男性の主人公が、日本(松前藩)に抵抗した末に捕らえられ、命を助けられて「改心」し、日本名と江戸幕府の役職を与えられます。そして故郷に戻った彼は、かつての想い人であったアイヌ女性と結婚し、アイヌの「総酋長」となるのでした。
これぞ故郷に飾る蝦夷錦、とでもいうつもりでしょうか。むしろ「お先棒」という言葉が頭をよぎるのですが。滅び行くアイヌの悲歌、といった傾向の物語でない点は、先行する幸田露伴『雪紛々』と違うところです。