核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

曙須賀子「こしのみぞれ」(一八九五 読む予定)

 以前にも引用しました、Raj Lakhi SEN氏の博士論文『明治文学作品を養子法・制度から読み直す』の第七章に、曙須賀子の新体詩「こしのみぞれ」への言及がありました。

 作者の曙須賀子は有名な木村曙(曙女史)の別名義ではないかと、SEN氏は推測なさっています。木村曙は一八九〇年に若くして亡くなっていますが、母親や親友が遺稿集を出してもおり、新たに発見された遺稿が 『文芸倶楽部 臨時増刊閨秀小説』に発表されたとしても不思議はありません。

 「アイヌの家に生れたる」女性の語り手が、早く両親を失い、「酒と賭とに日をおくる 世に恐ろしき日本人(「しゃも」)」に虐待されて育ち、現在は娼妓であるらしい境遇を、月に訴えているという七五調の長詩です。

 SEN氏は幸田露伴『雪紛々』や遅塚麗水『蝦夷大王』と「こしのみぞれ」を比較して、曙須賀子は文字文化をもたないアイヌ女性の声を、文語体の日本語によって「表象/代弁」したと評価なさっています。

 次は『雪紛々』読んでみます。こちらは確かデジタルコレクションで読めますので。