核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

山本弘『詩羽のいる街』 貨幣からの自由

 故・山本弘の多岐にわたる仕事は、前回の小論で語り尽くせてはいないのはもちろんです。

 連作短編『詩羽のいる街』は、お金を一切持たない詩羽(しいは。水曜日のカンパネラの詩羽(うたは)さんとは無関係)という女性が、人々のかかえている問題を解決することで生活し、周りの人々をもしあわせにしていく、という物語です。

 読んだのはだいぶ前なので細部は覚えていないのですが、この「お金を一切持たない」という生き方にはあこがれたのを記憶しています。

 谷崎潤一郎の「小さな王国」論を書きかけた時に、貨幣論はずいぶん読んだのですが、貨幣のない社会が可能だという論は出てきませんでした。詩羽のような生き方は個人レベルで、それも特異な人間にしか可能ではないのかも知れません。それでも、読み返してみたくはあります。まだ、あの近場の図書館に置いてあるでしょうか。