キツネちゃんとネコちゃんが卒業らしい。
といううわさが広まって以来、野ブタ芸能プロダクション(蕪)はしんこくな経営危機にみまわれました。
「社長。もはや残された手段は夜逃げのみですぞ」
「敏腕プロデューサーのタヌキくん。なにか策はないのかね」
「社長はそうおっしゃいますがね。いい素材がないことには」
「いるではないか」
「とおっしゃいますと」
「わたしだ」
タヌキは野ブタ社長の巨大な鼻の穴を、まじまじとのぞきこみました。
「お言葉をかえすようですが、社長はぶ…もとい、偶蹄目ではありませんか」
「その点なら心配はいらんよ。前向きにけんとうしたまえ」
タヌキは野ブタのあくまでも前向きな鼻を見ていると、もはや何を言い返す気力もなくなりました。
…おおかたの予想に反して、野ブタ。のファーストシングル「Boo」は、森コンヒットチャート四週連続第一位をきろくしました。
「社長のふくよかさが受けたのでしょうな」
「うむ。だが、アイドルと社長業の両立はむずかしいな。このところ過労でやせてきたせいか、人気も少し落ちたようだ。時代はさらなるふくよかな動物を求めているのかも知れんなあ」
いやな予感がして、一歩後ずさったタヌキの肩に、野ブタ。はぽんと前足をのせました。
「次はわたしが君をプロデュースする番だな。しっかりやりたまえ」
どうぶつ豆ちしき 偶蹄目(ぐうていもく) ひづめが偶数の動物のなかま。ブタ・ウシ・ヒツジなど。