森にすむタヌキの家に、一通の手紙が届きました。差し出し動物は書いてありません。
「タヌキさまへ
これは不幸の手紙です。これから4日以内にこれと同文の手紙を4通出さないと、あなたはおそろしい不幸に見舞われます。手紙を出さなかったヤマネコは、がけから落ちて大けがをしました。不幸な目にあいたくなければ不幸の手紙をだしなさい」
青くなってふるえあがったタヌキは、さっそく4通の手紙を出しました。
「アライグマさまへ これは不幸の手紙です」
「モグラさまへ これは不幸の」
「ツチブタさまへ これは」
「イボイノシシさまへ」
それから1か月もたたないうちに、不幸の手紙は森の動物たちのほとんど全員にいきわたってしまいました。
いうまでもなく、タヌキのもとにも大量の不幸の手紙が届きました。その4倍の手紙をせっせと4日以内に書いては出す日々にタヌキはあけくれました。ようやく書き終わるころには、さらにその4倍の手紙が返ってくるのですから、たまったものではありません。
あまりのいそがしさに夜もねむれず、目の下にくまをつくったタヌキは、森の動物たちを集めて対策会議を開きました。ほかの動物たちもみんな、ねむそうな目をしています。
ああでもないこうでもないと話し合ったあげく、だれかが名案を思いつきました。
森のはずれに住むヤギの家に、手紙をまとめて送るのです。ヤギはいつも手紙を読まずに食べてしまいますから、返事が返ってくる心配はありません。
翌日。山のように積み上げられた不幸の手紙を見て、ヤギはうれしそうにつぶやきました。
「タヌキに手紙を出したのは正解だったなあ。これで当分は食べものに困らないぞ」
教訓。チェーンメールには気をつけましょう。