核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

星新一 「コビト」(『週刊朝日』1968(昭和43)年8月9日号 38~39ページ)

 別件で昔の週刊朝日を読んでいたら、新潮文庫『ひとにぎりの未来』収録のショートショート「コビト」の初出を見つけてしまいました。同年8月16日の114~115ページには、「進歩」も。
 コピーはとる余裕がなかったのですが、私の記憶にある限り、初出と新潮文庫版との異同は見つかりませんでした。星新一の文章なら、かなり細かいとこまで覚えている自信があるのです。
 文庫で読む限り、「時事風俗と無縁」な星ショートショートですが、いかにもはいはい60年代な週刊朝日の中にあると、明確に「1968年的なるもの」への批判が、ひいてはその背後にあるマルクス主義への批判が見えてきます。 末端の運動員たちが善意に満ちているからといって、その運動そのものが善であるとは限らない、「コビト」のテーマはそういうことなのです。
 そういえばエッセイ集『できそこない博物館』でも、学生運動なんてものは何の必然性があったのかわからない、と書いていました。昭和文学としての星新一。実証的研究に値するテーマです。