核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

エラスムス「戰爭は体験しない者にこそ快し」 その2

 以前に1508年刊と書いてしまいましたが、二宮敬氏の注をよく読むと、最終的に現在読める「戦争は体験しない者にこそ快し」が成立したのは1536年だそうです。
 早とちりをお詫びします。いずれにせよ、時代を大幅に先取りした論です。特に以下の一節。
 
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 読者諸氏よ、ここで、ある新来の客人のことを思い描いていただきたい。エンペドクレスが住んだというあの月の都から、あるいはデモクリトスが考え出した例の無数の原子(アトモス)の世界のどれかひとつから、ひとりの客人が私たちの暮すこの地上に到着し、この世界の様子はいかがなものか知りたいと欲した、としてみよう。(略)
 すると、他の動物たちはおのおのその種のあいだで仲良く暮し、その種に備わる自然の理法を守り、自然の命じること以外は何ひとつ望まないでいるのに、ただ一種、この生き物だけがこれと趣を異にして、おたがい同士やくざな振舞におよび、狡智を弄し、腕力に訴え、戦さを仕掛け合っているではないか。さあ、これを目にした遠来の客人は、自分が聞かされてきた説明によるかぎり、ほかのいかなる動物といえども、私たち人間自身よりはるかに人間という名にふさわしい、と思い込んでしまうのではないだろうか。
 (『人類の知的遺産 23 エラスムス』 319ページ)
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 「宇宙人の目から見たら・・・」という平和論は大正期の村井弦斎も書いていますし、三島由紀夫の『美しい星』、江戸川乱歩の『宇宙怪人』もそのテーマです。
 古いほうでは、エラスムスも愛読したギリシア・ローマの古典にも例がありそうですが(ルキアノスあたり?)、ひとまずここに書き写しておきます。