核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

森銑三『明治東京逸聞史2』(平凡社 東洋文庫 1969) その2 「福地桜痴」

 同書132ページ。『女学雑誌』1904(明治37)年2月15日「時事 福地源一郎の今昔」の欄より。同誌はこれが最終号だそうです。


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 福地が築地に住んでいることを聞いて、訪問した人があったが、その家が知れない。派出所の巡査に問うたら、その巡査が「福地源一郎というは、何商売の人ですか」と反問したのに、憮然とした、ということを書いている。そして人間の栄枯盛衰の甚だしいことを歎じている。嘗(かつ)ての「池の端の御前」も、晩年には見るかげもなかった。
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 …福地とは誰か?私ならもちろん「平和主義小説家」と答えます。当時にしても、確か1904年2月には国会議員に当選していたはずです。単にその巡査が無知だっただけではないでしょうか。
 なお私は先日、福地がかつて小説を連載していた『日出国新聞』(やまとしんぶん)の1905(明治38)年の記事を一気読みしましたが、残念ながら日露戦争に反対する記事はみあたりませんでした。福地自身も議員活動で忙しいのか健康を害したのか、○○号記念のお祝い記事ぐらいしか書いていません。福地を「平和主義者」と、自信をもって答えられないゆえんです。