核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大江健三郎「毛沢東と樺さんの死」(『世界の若者たち』 1961)

 史上最悪の独裁者、毛沢東との大江健三郎の会見記。
 毛沢東が樺さん(安保デモでの犠牲者)の死に「深く激しい悲しみ」をその眼にうかべたこと、彼がいかに人間的な政治家であるかをえんえんと語っています。

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 中国の大躍進の旗のもとの現在は、この人民公社を中核とする生産および建設の発展の現在の時期の、中国の指導者の思想は、かつての解放の戦いの時期の思想とことなり、一人の娘の死にも悲嘆するという、平和な市民社会のなかの生活者の思想である。再び戦争がおこらぬかぎり、この思想は中国の指導者たちのつい(引用者注 「つい」に傍点)の思想となるであろう。
 (11ページ)
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 その大躍進と人民公社が、2000万人を超える犠牲者を、まさにこの時期に出していたのですが、それについての悲嘆を毛沢東が感じた形跡はありません。
 大江が毛沢東に買収された、とは思いません。おそらく彼は上に書いた通りのことを信じ、それに反する事実は何も目に映らなかったのでしょう。