「世界は一家、人類はみな兄弟」的な思想は、どうも私にはなじめないものがあります。
(毛沢東やポルポトを兄弟とみなせるでしょうか?)
かといって、友と敵を峻別するシュミット的な思想は、平和主義者である私にはもっと受け入れがたいものです。「敵は殲滅してもよい」という思想の果てにあるのは、自らを毛沢東やポルポトと同レベルに落とすものです。
こうしたジレンマに私は長年悩まされていたのですが、ムフの「対抗者」「闘技的民主主義」概念を知り、ようやく解放された気分になりました。
とはいえ、ムフは私にとっては特効薬だったのですが、他の人にとっての万能薬とは限りません。現に以前に紹介した田中智輝論文は、「敵としての彼らは依然として闘技民主主義の外部に置かれ続けているのではないか」という問いに対して、「ムフは未だ十分な議論を展開していない」としています。
次回の調査はムフ祭りになりそうです。ついてにシュミットも。