ナオミ(「楽しみ」という意味)という名の貧しい女性が、夫と、息子を次々に亡くします。
息子の嫁ルツはモアブ人(外国人)でしたが、ナオミに従って、その故郷ベツレヘムに行きます。
大麦刈りの季節。ミレーの落穂ひろいの絵のごとく、落穂をひろって糊口をしのぐ嫁姑二人の女。やがてルツはボアズという裕福な人と結ばれて子を産み、ナオミとルツにようやく生活の安定が訪れるのでした……。
英雄でも貴族でもない、女二人の地味な貧乏人情話。「〇〇人が✖✖人を打ち、△千人を殺した」なんて話が延々と続く旧約聖書にあっては異色です。
一応、ボアズとルツの孫がダビデだなんて話もありはしますが。
内村鑑三はこの話に感銘を受け、自分の娘にルツ子と命名しました。センスを感じます。谷崎潤一郎は『痴人の愛』のヒロインにナオミと命名しましたが、そちらはたぶん無関係でしょう。
罰当たりな感想を言えば、この話、「主」が本筋にまったく絡まないのも好印象です。