核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

ユリ・ゲラーの念力を信じる小林秀雄

 わりと有名な挿話ですが、小林秀雄の論法の典型的なパターンなので引用します。

 

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 この間テレビで、ユリ・ゲラーといふ人が念力の実験といふのをやりまして、大騒ぎになつたことがありましたね。(略)私はあゝいふ問題には学生の頃から親しかつたと言つてもいゝ。念力といふやうな超自然的現象を頭から否定する考へは、私にはありませんでした。今度のユリ・ゲラーの実験にしても、これを扱う新聞や雑誌を見てゐますと、事実を事実として受けとる素直な心が、何と少いか、そちらの方が、むしろ私を驚かす。

 「信ずることと知ること」 「日本への回帰」一九七五(昭和五〇)年三月 引用は第五次小林秀雄全集 第十三巻 新潮社 二〇〇一(平成一三)年 三九六ページによる

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 ……一応、機会があれば初出もあたってみますが、今回は異同もないかと思います。

 相手がスプーン曲げ芸人だから笑い話で済まされますけど、ヒットラー特別攻撃隊を賛美した時の論法と一緒です。誰かを無謬の天才やら達人と持ち上げ、自分だけがその真価を見抜いていると吹聴し、それを「素直に」信じない人間を馬鹿呼ばわりするというのは。