「すべての」と言い切っていいのかについては軽い異議もありますが、たいていの戦争は自衛を名目として始まります。大日本帝国は、周辺諸国を「利益線」と称し(要するに縄張りですね)、ナチスドイツは「生活圏」を主張し、それを「自衛」するためと称して、他国への戦争を行いました。誰かが書かねばならなかった本です。
私(菅原健史)も昔「自衛のための戦争は許されるか」と題して学会発表を行い、論文化したものを博士論文にも収録しましたが、明晰とはいいがたいものになってしまいました。「自衛のための戦争が許されないなら、それに代わる、侵略者に抵抗できる何があるのか」という問いに答えられなかったからです。
今の私ならばムフやグルスゾル(酒井萌絵氏の書評より)を援用して「闘技的平和」と答えるところでしょうが、まだ具体的とは言いがたいかも知れません。
森達也氏はいかなる答えを出しているのでしょうか。