核兵器および通常兵器の廃絶をめざすブログ

近代文学研究を通して、世界平和を考えています。

大江健三郎 「懐かしい年への手紙」

 いまだに、谷間と「在」とテン窪と森の位置関係がつかめないアンタルキダスです。
 フォークナーの「アブサロム!アブサロム!」みたいに、作者みずから描いた地図をのせるわけにはいかないんでしょうか。右回りとか左回りとか、文章で書かれてもわけわからん。
 ええと、大江健三郎は『宙返り』を読んで終わりにするはずだったのですが、撤回します。
 ヒカリさんの誕生を描いた「個人的な体験」以降の大江作品というのは、ひとつながりの壮大なサーガをなしておりまして、ある作品の登場人物が何の説明もなしに他の作品に登場する、といったことがざらなわけです。
 原発問題への関心ゆえ中途半端なところから読み始めた私のような読者には、そのへんがとっつきにくかったのですが、この「懐かしい年への手紙」は大江一族が勢ぞろいする話でして、大江ワールドへの入門にちょうどよい作品になっております(正直なところ、別に入門したくなかったのですが)。
 では、登場人物一覧をどうぞ。
 
 「僕」=Kちゃん ご存知O江K三郎。核時代の想像力を訴えるノーベル賞作家。イェーツ大好き。
 
 オユーサン Kちゃんの妻。「秋山くん」の妹。ヒカリさんら三児の母。
 
 ヒカリさん(イーヨー) Kちゃんの長男。頭に重い障害を持ち、あやうく病院に殺されかけるが、両親の必死の努力で助かる(「個人的な体験」)。言葉が遅れていたが、NHKの野鳥番組を聴いて、「クイナ、ですよ」と声を発した話は有名すぎ。後に絶対音感を発揮して作曲家になる。林家正蔵(前名こぶ平)に似ているが、ギャグセンスはその比ではない。未来SF「治療塔」を含め、ほぼすべての後期大江作品に登場する最重要人物。
 
 サクちゃん(オーちゃん) Kちゃんの次男。ヒカリさんのフォロー役にまわることが多いが、「キルプの軍団」でまさかの初主演を果たす。けなげで一生懸命。オリエンテーリングに賭ける青春。
 
 娘(マーちゃん) Kちゃんの長女(三番目の子供)。今のところ主演作品はないらしい。
(2011・6・8注 「静かな生活」で主演してました。しかも二番目の子供でした。訂正してお詫びします)
 
 秋山くん Kちゃんの高校時代からの親友で、オユーサンの兄。ていうかI丹J三。おかしな二人組の片割れ。
 
 アサさん Kちゃんの妹。暢気者に見えてしっかり者。
 
 母親 Kちゃんの母。ヒカリさんらの祖母。○○ですが!口調。森の伝説にやたらくわしい。
 
 隠遁者ギー 森の世捨て人。焼身自殺をとげる。「万延元年のフットボール」に登場。
 
 ギー兄さん 「懐かしい年への手紙」の中心人物であり、Kちゃんの人間形成に多大な影響を与えた五歳年上の友人。「燃えあがる緑の木」三部作では「さきのギー兄さん」と呼ばれる人物に相当し、救い主のギー兄さんとは別人。「宙返り」のギー少年とも、隠遁者ギーとも別人。ああ、ややこしい。
 
 「壊す人」 伝説的な村の創始者。火薬で岩を爆破したことからそう呼ばれる。「同時代ゲーム」では巨大化したり爆発したり転生したりとなんかすごいことになってた。ほんとに実在したのか?
 
 …こんな感じでしょうか。
 次回こそ、「宙返り」に突入します。